古野まほろ 『天帝のはしたなき果実』 9point

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

第35回メフィスト賞受賞作。
今話題の一冊、読んでみました。とにかく長い、そして読むのに体力を要する作品。最初の100ページくらいは、正直まったく意味が分からない。登場人物の紹介もないままに、アンコンメンバー8人の衒学的会話が乱れ飛び、ほんと意味不明。でもそこを乗り越えると、ぐぐっと面白くなります。独特の世界観の中で繰り広げられる青春劇には酔いしれ、そして500ページくらいからようやく登場するメインの事件とその推理合戦は圧巻。本格ミステリとしても十分満足。
ただねぇ、ラスト100ページについては何と言っていいものか。ここの部分はおそらく、冷静に読んだらいけず、後半の推理合戦の勢いそのままに”作者に読ませられてしまう”のが正しい読み方なのかな。私は実際そうでした。
冒頭100ページとラスト100ページは微妙ではあったけれど、全体通して非常に得がたい読書体験ができたのは確かなこと。これは、傑作と言えるんじゃないかな。ネット上での感想を流し見る限りでは批判がとにかく目立つように、好き嫌いははっきり分かれるだろうけど、私としてはすごくオススメ。