深水黎一郎 『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』 7point

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

第36回メフィスト賞受賞作。
こういう一発勝負ものは一気読みに限る、ということで久しぶりの一気読み。タイトル、そして帯&背表紙の煽り具合から、読む前の期待度はかなり高かった反面、第二の矢野龍王になってしまうんじゃないかという危惧も抱いてました。
ところが読み始める内に、そこは一安心。文章は読みやすいし、ストーリー展開も先を期待させる飽きさせないものだし。そうなると後は、「驚愕必至」と煽っていた結末に期待が膨らみます。
さて結果はどうだったか。
確かに予告の通り「読者が犯人」というトリック、それも、メタとかとんでも系ではなく、正当なトリックで実現されている。うん、決して悪くはない。ただねぇ、「なるほどなぁ」と感心はしたけれど、正直、驚きはそんなになかったんですよね。後半数十ページのトリックが明らかになるあたりでの盛り上がりに欠けたことが原因じゃないかと思うんですよ。
タイトルに「犯人はあなただ!」とあるくらいだから、そのシーンでも、ズバッ!とトリックを突きつけてくれれば良かったのに、淡々と伏線の検証をしたり、小説として綺麗な結末に終わらせようとしているあたりで、トリックのインパクトが薄れたように思えちゃって。驚きを求めていただけに、ちょっと残念。
まあでも、水準以上には面白かったですよ。この作者はこれからもこだわったミステリを書いてくれそうな気がするし、次回作にも期待します。